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万葉線について

短期大学部基礎工学科 1年 海老江 理貴

1.概要

 万葉線とは、富山県高岡市の高岡駅前駅から同市六渡寺駅までの高岡軌道線(7.9km)と六渡寺駅から射水市越ノ潟駅までの新湊港線(4.9km)からなる第三セクター方式の路線である。
 かつては加越能鉄道が運営する私鉄であったが、利用客の減少による経営悪化により2002年2月高岡市と旧新湊市(現射水市)が中心となって設立された第三セクターの万葉線株式会社に経営を譲渡し現在に至る。
 路線名は奈良時代の歌人・大伴家持が編纂したといわれる万葉集に由来する。



2.路線・運行形態

 万葉線の路線は先述の通り高岡駅前駅から六渡寺駅までの高岡軌道線と六渡寺駅から越ノ潟駅までの新湊港線で構成されているが、基本的に分け隔てされることなく直通運転されている。
 運行は全列車がワンマン、全駅無人で運賃は整理券方式で乗車区間に応じて下車時に支払う。運転手の交代は運用の終点ではなく、車庫と詰所が存在する途中駅の米島口(アルビス米島店前)で行う。


米島口にある車庫

米島口にある車庫



 ダイヤは通学ラッシュの朝夕を除き全線1時間に4本15分間隔のパターンダイヤで構成されている。新型車両が運行される時刻はあらかじめ決まっており、各駅に掲示されている時刻表にて知ることが出来る。
 路線の殆どが併用軌道(所謂路面電車)の高岡軌道線には複線区間が存在するが、専用軌道(新設軌道)の新湊港線は全区間単線で線内での列車の交換は行き違い設備のある駅にて行う。
 終点の越ノ潟から先へはかつて富山市まで線路が続いていたが、港湾の整備により廃止され現在は対岸まで無料の連絡船が運行されている。



3.車両

・MLRV1000形

MLRV1000形

MLRV1000形


 2004年より営業運転を開始した「アイトラム」の名で親しまれている新型車両。 車いすに対応したバリアフリーの低床車両で高齢者にもやさしい設計になっている。 2008年8月現在4編成在籍し今後も増備される予定である。



・デ7070形


デ7070形

デ7070形



 1967年に製造され今日も現役で定期運用に就いている吊り掛け駆動の旧型車両。
 以前は全車両が非冷房だったために夏場の車内は蒸し風呂と化すことも少なくなかったが、近年は冷房化改造が進み居住性が向上しつつある。



・デ5010形


デ5010形

デ5010形


1950年に製造されたかつての主力車両
除雪用車両としてデ5022のみ現存している。



5.近況

 万葉線はかつて前身の加越能鉄道時代に沿線住民の少子高齢化や地方特有のモータリゼーションにより輸送量が年々激減しており、一時は廃止に追いやられる寸前までの事態に発展したが、沿線住民の要望や自治体の出資により一命を取り留め第三セクターとして再出発した経緯を持つ。
 三セク転換後の現在は運賃の見直しや新型車両の導入などで持ち直しつつあるが、経営状況は依然厳しいものがあるといえるだろう。最近では沿線自治体が環境に優しい路面電車を観光資源やまちづくりの中心に生かしていこうという動きが活発になってきている。
 近年は駅ホームにスロープを設置するなど車椅子に対応したバリアフリー化工事が行われ、高齢者の多い沿線住民の声に応える取り組みも行われている。


スロープが設置されバリアフリー化した射水市新湊庁舎前駅ホーム

スロープが設置されバリアフリー化された射水市新港庁舎前駅ホーム



 自動車が普及したとはいえ、沿線住民にとって鉄道はまだまだ大切な足、貴重な公共交通手段をこれからも大事にしていきたいものである。



おわり


 
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